建設機械業

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建設機械現場におけるタップの重要性

建設機械の製造やメンテナンス現場では、めねじ加工においてタップは欠かせない存在です。現場で使用される金属部品は大径・厚肉・高硬度が多く、ねじ加工は品質・寿命・作業性すべてに影響を及ぼします。タップは単なる「ねじを切る道具」ではなく、機械の信頼性・保守性・作業効率に直結する重要アイテムなのです。

下穴の精度使用材質の硬さ現場の加工環境によってタップの性能が左右されるため、現場に適したタップの選定が求められます。加工条件を誤れば、タップ折損、ねじ山の精度低下、作業時間の延長という事態にもなりかねません。

タップの最適化による改善事例

タップ折損の課題を解決し、生産性とコスト削減を実現

対象となった加工ワークは、自動車の足回り部品です。材質はS55C(調質)、硬度HRC28で、使用していたタップはW-TF M6×1でした。硬い材質のため切削タップを使用していましたが、折損トラブルが頻発。また、タップ折損によるワーク損傷が原因で、不良品の発生も課題となっていました。

従来の切削タップから転造タップへの切り替えタップの折損や欠けの発生は解消されました。1本あたりの加工可能穴数は約1,000穴から2,000穴へと倍増。工具交換頻度が減少し、生産効率の向上とコスト削減の双方を実現しています。

建設機械で求められるタップの性能と選び方

耐摩耗性と寿命の長さ

大型構造部材のタップ加工では1箇所あたりの切削量が多く、工具にかかる負荷も大きくなります。耐摩耗性に優れた材料(高級粉末ハイスなど)や高硬度コーティングを施したタップは、長寿命で安定した加工が可能です。

摩耗しにくいタップを使うことで、ねじ山の寸法精度や表面品質を長期間維持でき、工具交換の頻度を減らすことができます。切れ味が低下したタップを使い続けるとねじ精度不良の原因となるため、寿命に達したタップは速やかに再研磨・交換することも大切です。

切削タップと転造タップ(ロールタップ)の使い分けも戦略的に重要です。切削タップは幅広い材質に対応可能ですが、転造タップは被削材が展延性の高い場合、ねじ山の強度が向上し、切りくずが出ないため寿命が長いというメリットがあります。

切りくず排出性

タップ加工時の最大の敵は切りくず詰まりです。特に建設機械で多用される鋼材(軟らかい構造用鋼や低炭素鋼など)は、切りくずが長く連続した形状になりやすく、狭いタップ穴の中で絡まりやすい傾向があります。そのため、切りくずを効率良く排出できるタップを選定することが重要です。

溝幅・溝深さが大きく容量の大きいタップほど切りくずが溜まりにくく、またねじれ角(スパイラル角)が大きい工具ほど切れ刃で発生した切りくずを溝に乗せて外部へ送り出しやすくなります。例えば、スパイラルタップの場合、ねじれた溝により切りくずをシャンク側に排出し、止まり穴加工に適しています。ポイント(ガン)タップの場合、切りくずを奥に押し出す構造で通り穴に向いていますが、止まり穴では切りくずの滞留につながります。

ねじ精度・仕上がり品質

高精度なねじ山は、建設機械の安定稼働、安全性、耐久性にも直結します。食いつき部・完全ねじ部・溝部・シャンク部など構造を理解し、用途に応じた選定が求められます

JIS規格で定められた中級(6Hなど)の公差クラスを満足することはもちろん、相手部品のメッキ厚みや使用環境まで考慮したタップ精度等級の選定が重要です。例えば、めねじに表面処理(メッキ)を施す場合は、コーティング膜厚ぶんだけねじ山が埋まるため、あらかじめ有効径が大きめ(オーバーサイズ)のタップを用いて加工することで、仕上がり寸法を補正できます。

加工後のねじ山表面の仕上げ品質も重要です。粗い表面やバリが残れば、締結時のかじりや緩みの原因となります。高速鋼タップに適切なコーティング(TiNやTiCNコーティングなど耐摩耗被膜)を適用することで、潤滑性が向上し表面仕上げ性と工具寿命が向上します。

建設機械業界の動向・トレンド・業界課題

少子高齢化による担い手不足が深刻化しています。55歳以上の就業者割合が高まる一方、若年層は低水準で推移しており、大量退職による人材減少が懸念されている状況です。また、気候変動による災害の激甚化、社会資本の老朽化、カーボンニュートラル対応など、多方面での課題に直面しています。これらを解決するために、生産性向上と省人化が課題です。

製造現場で熟練技能者が減少する中、タップ加工を含む切削工程の自動化・無人運転へのニーズが高まっています。機械メーカー各社も、機械や工具のモニタリング技術を開発。タップ折損などによる不良品発生を検知、予防する試みが進められているのです。

メーカー側では、省人化に資する折れにくいタップや専用ホルダーの提供が見られるようになりました。また、折れにくいタップを実現するために、製品の高性能化・軽量化を目的に高強度材を用いたタップが増えています。素材やトレンドに合わせてタップの材質・形状・表面処理も進化しており、新しい加工条件下でも安定したねじ加工を支える役割を果たしています。

建設機械業

今後も建設機械の製造・整備現場において、タップは品質と生産性を支える不可欠な存在であり続けます。工具選定や加工条件の最適化は、単なる作業効率の向上にとどまらず、機械の信頼性や安全性、さらには業界全体の競争力強化にも直結します。

現場ニーズの変化に対応しながら、適したタップ活用を追求することが生産性向上とコスト削減の鍵となるでしょう。

当サイトでは「切削トラブル」「耐久性」「加工精度」など、現場で起きやすい悩みに合わせて、各メーカーの製品情報を整理しています。製品選びに迷った際は、ぜひ「タップメーカー3選」をご覧ください。

よくある課題別に選ぶ
タップメーカー3選

タップの寿命を延ばして
生産性を上げましょう
切りくずの噛み込み
ホルダーへの巻きつきが課題なら
彌満和製作所
(YAMAWA)
Z-PRO
彌満和製作所
引用元HP:彌満和製作所公式HP
https://www.yamawa.com/jp/
タップの全長を伸ばし
切りくずの排出を向上
機械加工で起こりやすい切りくずの噛み込みやホルダーへの巻き付きを防ぐため、一般的なタップよりも全長が長い「セミロング形状」を採用。切削油剤の確実な外部給油が可能となり、切りくずの詰まりによる折損や精度不良の改善に導く。
高硬度材の加工
タップの折損が課題なら
田野井製作所
(TANOI)
Wタフレット
田野井製作所Wタフレット
引用元HP:田野井製作所公式HP
https://www.tanoi-mfg.co.jp/product/w_tf/
HRC45の高硬度材でも
高寿命・高速度加工を実現
コーティングの密着性向上とワークとの摩擦を抑えるねじ山形状によって、高速加工と高耐久性を実現しているWタフレット。高硬度材でも加工定数を2倍に延ばした実績があり、タップ折損防止が期待できる。
めねじ内径のバリによる
加工工数の圧迫が課題なら
不二越
(NACHI)
バリレスシリーズ
不二越(NACHI)バリレスシリーズ
引用元HP:不二越(NACHI)公式HP
https://www.nachi-technologypark.jp/tool/product11/
めねじ内径のバリをなくし
バリ取りの二次加工を省く
「加工後のバリ取りは当然」という常識を覆す、バリレスシリーズ。下穴とタップ谷底の隙間を無くすことでバリレスを実現している。バリレス性能により懸念される寿命も、汎用タップと同等以上を担保。

よくある課題別に選ぶ
タップメーカー3選