溝の形状:スパイラルタップとは

目次
目次

スパイラルタップとは

ネジ部の溝がらせん状になったタップのこと

スパイラルタップは、ネジ部の溝がらせん状になっているのが大きな特徴です。そのため、タップの進行方向とは逆側から、切り屑がくるくるとらせんを描きながら排出される仕組みとなっています。この溝にはねじれ角があり、角度が大きいほど切り屑の排出性が高くなります。また、用途に応じて、右ねじれと左ねじれの2種類があるのも特徴です。

止まり穴と貫通穴どちらも加工ができる

スパイラルタップは、貫通穴のねじ加工に使用ができますが、切り屑を上方から排出する特性上どちらかと言うと止まり穴のねじ加工に適しています。ただし、溝がねじれている分芯厚が薄くなり、他のタップと比べると剛性が劣ります。そのため、深穴加工や硬い被削材を加工する場合は、タップが折れやすい点に注意が必要です。

スパイラルタップの種類と用途

ハイス(HSS)スパイラルタップ

ハイススパイラルタップとは、高速度工具鋼(ハイス)をタップ本体の材質に使用したタップです。スパイラルタップの中でも主流となっているのが、このタップになります。一般的な部品のねじ加工に広く使用されていますが、高温に弱い特性があるため、切削熱が高い加工や、硬い材料の加工には向いていません。

超硬スパイラルタップ

超硬スパイラルタップは、硬度の高い超硬合金を材質に採用しているタップです。耐摩耗性や耐熱性にも優れているため、硬さのある難削材や特殊鋼などの加工に適しています。ただし、靱性が低い特性もあるため、衝撃が加わると刃欠けやチッピング、タップの折れが生じやすい点に注意が必要です。

ロングシャンクスパイラルタップ

シャンクとはタップの柄の部分を指しますが、この部分が一般的なスパイラルタップよりも長めに作られているものがロングシャンクスパイラルタップです。深さのあるねじ加工で主に使用されます。ホルダーとの距離がある分、排出された切り屑が巻き付きづらいといった特徴もあります。

左ねじ用スパイラルタップ

左ねじ(逆ねじ)の雌ねじ加工に対応したスパイラルタップです。一般的なスパイラルタップは右ねじに対応しているため、左ねじ用の加工が必要な場合は、こちらのタップで加工する必要があります。左ねじは、バスやトラックの左側のホイール取付ボルト、自転車の左側ペダルなどで使用されています。

スパイラルタップの使用方法と注意点

スパイラルタップは機械加工で使用する

スパイラルタップは、食い付き部が2.5山程度と浅いため、手作業での加工には向いていません。そのため、機械加工で使用されることが多いです。まず被削材に下穴をあけてから、下穴径や深さに応じたスパイラルタップを使用します。

雌ねじ加工の際は、適切に切削油を注入しながら、適切な回転速度と送り速度で加工を進めていきます。なお、回転速度や送り速度などの切削条件は、各メーカーで製品ごとに公表している条件に従って設定を行いましょう。

切り屑の巻き付きに注意する

スパイラルタップは、上方から切り屑を排出するため、シャンクやホルダーに切り屑が巻き付かないよう注意が必要です。切り屑が巻き付くと加工精度の低下やタップの破損につながる恐れがあります。切り屑が巻き付く場合は、下穴径や加工速度など切削条件を見直してみましょう。

対策を講じても巻き付きが続く場合は、タップ自体を見直すのも一つの手です。メーカーによっては切り屑の巻き付き防止に配慮した製品もあるため、そういうタップに交換するのもおすすめです。

スパイラルタップの作業例

モノタロウ公式HPキャプチャ
画像引用元:モノタロウ公式HP(https://www.monotaro.com/note/readingseries/sessakukiso/0601/)

中央にあるイラストのように、スパイラルタップの回転に合わせて、ねじれた溝に切り屑を絡め取りながら上方に向かって排出します。これが、スパイラルタップが止まり穴に適していると言われる理由です。

加工の際にらせん状の切り屑が排出されますが、切り屑のカールが狭くピッチが細かい形状だと排出性は良好です。一方で、切り屑の形状が悪いと、切り屑の詰まりや絡まりなどのトラブルを起こす要因となります。

スパイラルタップとは

スパイラルタップは、切り屑を上方に排出する特性があるため、止まり穴の雌ねじ加工に適しています。種類によって対応できる被削材や製品、下穴のサイズなどが異なるため、加工部品の特徴に応じたスパイラルタップの選定が必要です。

本サイトでは、スパイラルタップ以外のタップの種類、メーカーなどについてもご紹介していますので、以下のリンクから他のページも是非チェックしてみて下さい。

タップの種類と用途の違いを
わかりやすく解説

当サイトでは「切削トラブル」「耐久性」「加工精度」など、現場で起きやすい悩みに合わせて、各メーカーの製品情報を整理しています。製品選びに迷った際は、ぜひ「タップメーカー3選」をご覧ください。

よくある課題別に選ぶ
タップメーカー3選

タップの寿命を延ばして
生産性を上げましょう
切りくずの噛み込み
ホルダーへの巻きつきが課題なら
彌満和製作所
(YAMAWA)
Z-PRO
彌満和製作所
引用元HP:彌満和製作所公式HP
https://www.yamawa.com/jp/
タップの全長を伸ばし
切りくずの排出を向上
機械加工で起こりやすい切りくずの噛み込みやホルダーへの巻き付きを防ぐため、一般的なタップよりも全長が長い「セミロング形状」を採用。切削油剤の確実な外部給油が可能となり、切りくずの詰まりによる折損や精度不良の改善に導く。
高硬度材の加工
タップの折損が課題なら
田野井製作所
(TANOI)
Wタフレット
田野井製作所Wタフレット
引用元HP:田野井製作所公式HP
https://www.tanoi-mfg.co.jp/product/w_tf/
HRC45の高硬度材でも
高寿命・高速度加工を実現
コーティングの密着性向上とワークとの摩擦を抑えるねじ山形状によって、高速加工と高耐久性を実現しているWタフレット。高硬度材でも加工定数を2倍に延ばした実績があり、タップ折損防止が期待できる。
めねじ内径のバリによる
加工工数の圧迫が課題なら
不二越
(NACHI)
バリレスシリーズ
不二越(NACHI)バリレスシリーズ
引用元HP:不二越(NACHI)公式HP
https://www.nachi-technologypark.jp/tool/product11/
めねじ内径のバリをなくし
バリ取りの二次加工を省く
「加工後のバリ取りは当然」という常識を覆す、バリレスシリーズ。下穴とタップ谷底の隙間を無くすことでバリレスを実現している。バリレス性能により懸念される寿命も、汎用タップと同等以上を担保。

よくある課題別に選ぶ
タップメーカー3選